Nature and Biodiversity

地球の生物量の0.01%にすぎない人間がもたらす甚大なインパクト

絶滅危惧種であるレッサーパンダの個体数は10,000頭以下

絶滅危惧種であるレッサーパンダの個体数は10,000頭以下 Image: ロイター/Rebecca Naden

Ron Milo
Professor, Weizmann Institute of Science
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科学者を含め、我々の多くは生物界を把握できていません。このことは、名門大学の生物学者と生態学者を対象に行った非公式な調査によって明らかになりました。この調査において、「地球上で生物量が最も多いのは動物種か、植物種か、それとも細菌類か?」「総生物量が多いのは陸上と海洋のどちらか?」という2つの問いに対して、大多数の回答はいずれも不正解だったのです。

この結果は、かつてなく大量の情報が溢れる時代において、我々の知識が紛れもなく欠落している一例を示しています。事実とのかい離を解消すべく、イスラエル・ワイツマン科学研究所とカリフォルニア工科大学の研究者とともに、地球の総生物量を試算しました。研究結果は米国科学アカデミーの学術誌に寄稿し、メディアにも幅広く様々な内容で取り上げられました。

数年をかけて膨大な先行研究から情報を収集・統合し、各作業手順の詳細を文書化。誰もがアクセスできる公開情報として蓄積しました。この研究結果の一部を紹介します。

我々の研究は「Plant Blindness(植物に対する盲目)」と呼ばれる、植物の存在を見過ごしがちな現象を例証する結果となりました。地球の生物量の大多数を占めるのは植物(我々の試算では8割~9割)。にもかかわらず、多くの人々は一貫してこの事実を過小評価しています。回答した多くの生物学者は生物量の大多数は細菌類と予想するものの、それらの生物量は2番手、そして動物界は0.5%程にすぎません。

また、BBCのドキュメンタリー番組、ブルー・プラネットが海洋生態系の膨大さを伝えてはいるものの、陸上の生物量は海洋生物全体の約80倍にも上ります。

地球の総生物量に対する人間の割合は約0.01%。これは軟体動物や菌類、環形動物等よりも少ない。
Image: Humans account for only about 0.01% of the planet's biomass. That's less than mollusks, viruses, and segmented worms, among others.

研究結果から、人類が果たすべき生態学的役割を示すことができます。総数という点では、人間の総数は地球の総生物量の0.01%にすぎず、誤差として無視できるほど僅かです。しかし、少数派の我々が持つ役割を無視することはできません。人間がもたらすインパクトは甚大なのです。地球史に人類が登場した時点から今日まで、地球の総生物量は半減しています。これは、農地や放牧地を作るために人間が森林破壊を行ってきたことに大きく起因しています。

こうした数字は、これまでに人類がどれほど多くの生物体を絶滅に追いやったかという事実のみならず、近年、生き残っている生物を我々がいかに変化させてきたのかを新たに気付かせるものでした。過去数世紀にわたり、野生哺乳類の総数は何倍にも減少。今日の家畜哺乳類の総数は野生哺乳類の20倍です。娘と一緒に遊んだジグソーパズルには、ゾウとサイの隣にキリンが描かれていましたが、地球の野生生物の総数からはひどくかけ離れたイメージです。もし、現在の生物量を踏まえてこのイメージを考え直さなければならないのなら、そこには牛が描かれ、その隣に牛、またその隣に牛、そして豚、という何ら面白みもない絵柄であるべきだということになります。

東南アジアでは養豚、南アメリカでは養牛がより多く生息するように、生物量の割合は地域ごとに異なります。しかし、南極を除く全大陸において、家畜哺乳類の生物量は野生哺乳類を大きく上回っており、50万頭のゾウが生息するアフリカも例外ではありません。鳥類の生物量も大きく変化しており、ニワトリが大部分を占める家禽類の現在の総数は全野鳥の2倍に上ります。

人類が大規模な変化をもたらしてきたことは、現代の地質年代が人類の時代として「人新世」と呼ばれる所以です。それでは、今後はどのような道を辿るのでしょうか。将来の世代に健全で豊かな自然生息地を残すために必要な解決策は簡単なものではありません。農地利用が森林破壊の主要因となり、動物界の個体数を減少させていることから、我々は食物やその生産方法の多くを変えていかなければならないのです。

しかし、一つ確かなことは、人類が正しい道筋に向かうためには周辺にあるものを入念に調べなければならない、ということです。我々は盲人を導く盲人を当てにすることはできません。数値に関する徹底した研究が示す観点に注意を向け、その方向に進んでいかなければならないのです。

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