日本のTrusted Webが目指すデジタルガバナンスの向上

日本政府はTrusted WebというWEB上での新たなガバナンスの仕組みを構築しようとしています
日本政府はTrusted WebというWEB上での新たなガバナンスの仕組みを構築しようとしていますImage: Andy Kelly for Unsplash
  • 日本政府はTrusted WebというWEB上での新たなガバナンスの仕組みを構築しようとしています

  • この取り組みは、WEB3の理念や方針等と共有するところもありますが、WEB上で検証可能な領域を増やすことに重きをおいています

  • Trusted Webは、従来のWEBがもたらした過度なパワーの集中を構造的に回避しつつ、WEBに透明性と安全性を実現できる可能性があります

インターネットは、情報の蓄積、共有、検索に関わる個人の能力を高めることで、人々の力を拡大してきました。その一方で、広告中心の収益モデルが個人情報の悪用を招き、創出された富が一握りの巨大テック企業に極端に集中しているといった欠点もあります。

ウェブが少数の企業によって形作られている世界から脱却しようという動きが活発化しています。この動きは分散型金融にルーツを持っています。分散型金融の世界では、伝統的な金融機関や国の管理からの非介入が約束されていることもあり、「管理者不在」とされる暗号通貨資産の取引が急速に拡大していました。しかし最近起きた暗号通貨業者の経営破綻は、規制対象外の曖昧な金融プラットフォームのプレーヤーに対する信頼は簡単に悪用されうることを明らかにしました。

分散型金融も含めたインターネットの世界を、従来型の規制のもとに戻すことを提案する声もあります。これが妥当なケースも一部にはあるかもしれませんが、現実はデジタル取引が普及するにつれ、州や国、大手機関のルールだけに依存した信頼とガバナンスのシステムを構築することは困難です。むしろ、ウェブ上でビジネスを行う際に、個々に互いが信頼し合える権限を個人や中小企業、企業に付与できる、新しいタイプのガバナンスが必要です。

日本の「Trusted Web」

日本政府が先導するマルチステークホルダー・イニシアチブでは、産学官が連携してデジタルガバナンスの新システムの開発に取り組んでいます。内閣府による最近のホワイトペーパーでは、イニシアチブのビジョンと基本的な技術アーキテクチャの概要が示されており、現実世界のユースケースおよび国際協力を通じた試験と改良が進められているところです。目下のところ、13のTrusted Web試験プロジェクトが進行中です。

Image: Trusted Webホワイトペーパー

Trusted Webは、既存のインターネット・テクノロジーと構造を利用して、当事者間の取引を検証できる領域を増やすことを目指しています。この新しい信頼の枠組みを現在のウェブに重ねることで、一握りのテック巨大企業による悪用を助長することなく、さらに監視意識の強い国家の強圧に委ねることもなく、データをより簡単かつ安全にやり取りすることが可能になると考えられます。

Trusted WebにはWeb3と共通の要素があります。Web3とは、公共のブロックチェーンを基盤とする新しい分散型のインターネットの概念です。ただ、Trusted Webの開発者たちは、データ流通の基礎として信頼のメカニズムを最大化することに特に関心を持っています。

信頼と健康

Trusted Webの試験が行われている分野の一つに、ヘルスケアがあります。ヘルスケアは特に情報の機密性が高く、悪用防止に対するニーズが極めて高い分野です。ヘルスケア分野にはすでにデータ共有のためのさまざまなメカニズムや基準が存在していますが、信頼できる検証を経てデータの真正性を確保することはなお大きな課題となっています。

日本で実施されているTrusted Webのある試験プロジェクトでは、靴用センサーを装着した人から歩行を中心とした日々の健康関連データを医療機関等が入手できるプラットフォームを構築しています。このほか、医療機関、製薬会社、規制当局の間で臨床試験の実施に関連した研究データの交換を促進するプロジェクトも行われています。

信頼できるハードウェア

IoTもまた、Trusted Webの舞台になる可能性があります。インターネットに接続されたデバイスが一段と普及し、サイバーセキュリティに関わるさまざまな懸念が高まっています。IoTデバイスは、互いにやり取りするデータを検証する必要があります。データ交換を管理する強力なソフトウェアプロトコルが導入されていても、データが行き交うハードウェアにスパイウェアがインストールされてしまうと、そのソフトウェアプロトコルは役に立たなくなります。ネットワークに接続されたデバイスのあらゆる構成要素が、何らかのレベルでセキュリティ上の潜在的脅威となります。

サプライチェーンが複数の国をまたいでいる複雑さを考えると、従来のように規制当局によってすべてのIoT構成要素のセキュリティを確保することには限界があります。そこでTrusted Webプロジェクトチームでは、関係者がネットワークハードウェアの信頼性を構成要素レベルまで検証できるメカニズムを試作しています。

このシステムは、分散型デジタル台帳などの新しいテクノロジーを用いてハードウェアメーカーに評価プロセスを記録・共有させ、それを複数の関係者が確認できるようにすることで機能します。プロジェクトでは、関係者の役割、データモデル、ウェブとして実行および拡張すべき機能を定義することを、目標の一つに掲げています。

個人の健康データであれ、ネットワーク上のマシンのデータであれ、信頼できるデータ交換の鍵になるのは、データの本来の出所とその用途に対する検証です。これまでこの検証作業は、ほとんどが巨大テック企業や強権的な国家の手に委ねられてきました。Trusted Webは、魅力的な第三の方法、つまり権力の過度な集中に付随するデメリットのない、透明かつ安全にインターネットを管理する方法を提供します。

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