ダボスにおけるオープンフォーラムとそのレガシー

2024年、年次総会のオープンフォーラムにて、ジェーン・グドール博士は若者に向けてパネルディスカッションを行いました。
2024年、年次総会のオープンフォーラムにて、ジェーン・グドール博士は若者に向けてパネルディスカッションを行いました。Image: World Economic Forum / Boris Bal
  • オープンフォーラムは、世界経済フォーラム年次総会期間中にダボスで開催される、一般向けの公開セッションです。

  • 2003年に創設され、ジェーン・グドール氏やウィル・アイ・アム氏から、スイス大統領、先住民族のリーダー、学生モデレーターまで、多彩な講演者が登壇しています。

  • #WEF26 におけるオープンフォーラムのテーマは「Visions of 2050:Tomorrow Starts Now(2050年のビジョン:明日は今、始まる)」です。オープンフォーラムについて解説します。

故ジェーン・グドール氏が2024年世界経済フォーラム年次総会への参加を承諾した際、同氏の条件は、再びオープンフォーラムに登壇することでした。

2025年10月に91歳で逝去したこの英国の霊長類学者は、2019年のオープンフォーラムで初めて講演を行いました。その経験が素晴らしいものであったため、再登壇を強く希望していたのです。

それから5年後、同氏は(傍らにおもちゃの猿を置きながら)若者たちに向けて「あなたたちはもう誰にも止められません」と語りかけ、世界が直面する最大課題の解決を訴えました。

ミュージシャンであり、起業家でもあるウィル・アイ・アム氏も毎年参加を希望するほど、創造力をかき立てるオープンフォーラム。その影響力の大きさが伺えます。

では、オープンフォーラムとは具体的に何であり、どのようにして生まれたのでしょうか。

年次総会におけるオープンフォーラム

オープンフォーラムの歴史は、ソーシャルメディアやライブストリーミングが普及する以前から始まっています。第1回のオープンフォーラムは、2003年に開催されました。当時、年次総会の様子は伝統的なメディアを通じてのみ報じられ、会議場の閉ざされた扉の向こうで何が起きているのか、一般には公開されていませんでした。

西暦2000年のミレニアムを境に、世界中で反グローバリゼーション運動が広まっていた頃です。オープンフォーラムは、多様な声が経験を共有し、リーダーたちに説明責任を求める場を設けることで、年次総会への理解を深める手段として構想されました。

現状を打破することを目的としたハイレベルな無料パネルディスカッションを開催し、相互に関連するグローバルな課題の解決に向けて、多様な視点を確実に反映させることを目指しています。

オープンフォーラムは当初、スイス・プロテスタント教会連盟とスイス改革派教会連盟がダボスで主催し、世界経済フォーラムが講演者の手配などを協力して行っていました。2012年には「グローバル・リーダーシップ・フェローズ」プログラムの一環として引き継がれ、2017年からは世界経済フォーラムが担当することとなりました。

また、カンボジア、インド、ヨルダン、ベトナム、サウジアラビアなど、世界各国で開催されるいくつかの会合においても実施されています。

オープンフォーラムは、透明性向上の取り組みから発展し、気候正義や社会的不平等といった喫緊の地球規模課題において、先住民族コミュニティ、若年活動家、社会的弱者など、これまで十分に反映されてこなかった声に注目を集める重要なプラットフォームへと進化を遂げています。

これに加えて、包摂性は設計上の基本理念であり、セッションはスイス在住者から年次総会の参加者まで、あらゆる人々に開放されています。

ダボスにあるスイス・アルパイン・スクールの講堂で開催されるオープンフォーラムでは、学校が常に重要な役割を担います。学生によるパネルディスカッションの参加や、セッションの司会はその一例であり、スイスの高校生が毎回参加しています。

オープンフォーラムには毎年、包括的なテーマを設定。2026年のテーマは「Visions of 2050:Tomorrow Starts Now(2050年のビジョンー明日は今、始まる)」です。1週間にわたる10のセッションでは、氷河の融解から量子技術の進展まで、現代の人類が直面する喫緊の課題と、すべての人々にとってより良い未来を創るための連携の方法について議論が行われます。

過去10年間のセッションは、こちら。

率直な議論と影響力の創出

過去20年間の登壇者は、スイス連邦大統領からウクライナのクリチコ兄弟、米国のバレリーナ、ミスティ・コープランド氏、ノーベル賞受賞者のマララ・ユスフザイ氏やカイラシュ・サティヤルティ氏まで多岐にわたります。

2019年のオープンフォーラムでは、サティヤルティ氏が強制児童労働から子供たちを救う闘いを描いたドキュメンタリー映画『The Price of Free(自由の価格)』が上映されました。映画が終わり、同氏がステージに上がった瞬間、会場は沸き立ち、感動の渦に包まれました。

翌年には、13歳の銃暴力反対活動家、ナオミ・ワドラー氏がウィル・アイ・アム氏と共に登壇。「未来は私たちの手に委ねられています。私たちは誰を選出するかを決めることも、自ら立候補することもできるのです」と聴衆に訴えました。

セッションは常に包摂的かつ開放的、教育的であり、多国間対話が求められる時代に「オープン」という概念を実証しています。

スイスで開催されるからこそ、オープンフォーラムはスイスの声と視点を意図的に取り入れています。スイスのアカデミア、政界、青年団体、企業からの講演者が定期的に参加しているのです。

2017年のオープンフォーラム参加に触発され、ツーク・ルツェルン国際学校の生徒たちは「ユース・フォーラム・スイス」の設立を決意しました。2018年には、世界経済フォーラムのジュネーブ本部を訪問し、セッションの構成やイベント運営に関する研修を受講。同年、初の会合が開催され、現在は年次総会の直前に毎年開催されています。2026年のテーマは「The Power of Small Changes(小さな変化の力)」です。

スイス、バーデンのある学校では、毎年オープンフォーラムのセッションをカリキュラムの一部に取り入れ、生徒たちはテーマについて学び、その学びの集大成としてセッションに参加します。

学校や若者たちを単なる聴衆ではなく対等な思考者として扱い、重要な対話を形成することにより、オープンフォーラムの真の影響力が発揮されます。つまり、機関がどのようにハイレベルな議論を民主化し、リーダーシップを分散させるかを模範的に示すのです。

相互に関連する危機に直面する今日の世界において、これは単なる理想ではなく、不可欠な要素です。

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