2026年国際女性デーと女性の健康、リーダーたちの呼びかけ

実験室で検体の解析をする女性。女性の健康に関する研究と資金は、グローバルな総量のわずか5%未満です。
女性の健康に関する研究と資金は、グローバルな総量のわずか5%未満です。Image: REUTERS/Thierry Gouegnon
  • 2026年国際女性デーを機に、様々な分野のリーダーたちが女性の健康に関する研究と資金配分におけるバイアス(偏り)を指摘しています。

  • 女性の健康は、推定1兆ドル規模の市場機会を有しています。一方、女性の健康関連の研究は、民間医療投資の6%しか受け取っておらず、性別を分けて結果を報告する臨床試験は極めて少ない状況です。

  • リーダーたちは、インセンティブの再構築、アカウンタビリティの強化、公平な投資の加速には、多角的な取り組みが必要であると強調しています。

2026年の国際女性デーにあたり、産業界、慈善活動、政策立案者、アカデミア、医療システム、金融界のリーダーたちが、共通のメッセージで結束しています。女性の健康に関する研究と資金調達における偏りは構造的な課題であり、その影響は女性の健康という分野をはるかに超えて広がっています。

世界経済フォーラムのエビデンスが示すように、女性の健康は1兆ドル規模の機会であるにもかかわらず、投資額としては民間医療投資のわずか6%に過ぎません。

何十年もの間、健康分野において研究、測定され、資金提供を受け、拡大されてきたデータは、女性の生物学的現実、実体験、経済的貢献を反映していません。この状況はパターン化し、繰り返されてきました。

例えば、性別ごとの臨床試験結果が出ているケースはわずか5%程度です。性別ごとの報告がなければ、エビデンスは不完全であり、安全性と有効性を損なう可能性があります。

こうした格差への認識は高まっていますが、研究、資本配分、政策決定における構造的なインセンティブが、依然として不均衡な結果を生み出しています。

本寄稿文では、製薬研究や医療システムからコンサルティング、慈善活動、投資に至るまで、様々な分野のグローバルリーダーたちの視点を集めました。

盲点となりやすいポイント、資金調達モデルにより生じる優先順位への影響、そして女性の健康がニッチなカテゴリーとして扱われないようにするために必要な変更点を検証しています。

女性の健康におけるバイアスの是正は、特定の個人や組織だけの責任ではありません。各国政府、産業界、投資家、慈善団体、雇用主、医療提供者など、あらゆるステークホルダーの協調的な行動が求められます。以下に紹介する声は、こうしたマルチステークホルダーの必要性を反映したものです。

グローバルリーダーたちが語る、女性の健康研究におけるバイアス

フィオナ・マーシャル、ノバルティス、バイオメディカルリサーチ・プレジデント

「新興テクノロジーは研究におけるバイアス解消に寄与し得るでしょう」

フィオナ・マーシャル、ノバルティス、バイオメディカルリサーチ・プレジデントImage: Novartis

前臨床研究から臨床試験、市販後調査に至るまで、研究開発のあらゆる段階において患者を意味ある形で代表することが、バイアスの防止と是正に不可欠です。

自己免疫疾患など女性に特に影響を与える疾患であっても、研究や臨床試験において女性が適切に代表されないケースが少なくありません。これは理解の欠如につながり、最終的にはより悪い結果を招く可能性があります。

構造的に見れば、AIなど新興テクノロジーの広範な導入は、基礎となるデータが性差を正確に捉え、既存の格差を助長しない限りにおいて、前例のない規模でデータを活用することができ、研究バイアスに対処する絶好の機会となるでしょう。

また、創薬や臨床試験におけるバイアスを生む要因をより的確に特定し、解消するための重要な方法の一つになります。

サンギタ・レディ、アポロ病院共同院長

「女性の健康に対する格差の解消はGDPに数兆ドルの追加効果をもたらします」

サンギタ・レディ、アポロ病院共同院長 Image: Apollo Hospitals

女性は人生の約25%以上を健康状態の悪い状態で過ごします。一方、がん以外の女性特有疾患を対象としたグローバルな医療研究資金は5%未満に留まります。

妊産婦死亡は依然として2分ごとに1人の命を奪い、非感染性疾患はグローバルな女性の死因の65%以上を占めています。これらは一次医療と予防医療への早期投資により、多くが予防可能です。

最も緊急を要する課題は、ジェンダーに配慮した予算編成、公平な保険適用範囲、デジタル医療へのアクセス、性別ごとのデータにあります。すべての女性と少女の権利、正義、行動を真に重視するのであれば、女性の健康は福祉としてではなく、基礎的な経済インフラとして資金提供されるべきです。

女性の健康格差を解消することは、今後10年間でグローバルGDPに数兆ドルの増加をもたらす可能性があります。予防、プライマリケア、テクノロジーを活用した医療アクセスを通じて女性の健康を経済基盤の中核として整備することは、包摂的成長、レジリエンス、長期的な経済安定を実現する収益性の高い投資戦略です。

パウラ・ベロスタス・ムゲルツァ、カーニー、シニアパートナー・グローバルヘルスケア・ライフサイエンス・プラクティス・リーダー

「研究におけるジェンダーバイアスは、下流へ伝播します」

パウラ・ベロスタス・ムゲルツァ、カーニー、シニアパートナー・グローバルヘルスケア・ライフサイエンス・プラクティス・リーダーImage: Kearney

研究におけるバイアスは実験室に留まりません。それは診断、治療、結果といった下流へ伝播します。臨床試験における女性の参加率が低い場合、データが性別別に分類されていない場合、また生物学的差異が理解の対象ではなく制御すべき変数として扱われる場合、その結果として「標準的な男性」を前提とした医療経路が構築されます。

これは、心血管疾患から自己免疫疾患に至るまで、あらゆる疾患において女性の診断遅延、不適切な投薬、治療成果の低下につながります。医療システムは、設計段階で代表性を確保し、性別・ジェンダー特異的な分析を義務付け、エビデンス創出とアカウンタビリティを結びつける研究を要求しなければなりません。

これは単なる公平性を超えた課題であり、世界中の女性に適切な治療成果をもたらす良質な科学を実践することになります。

ルーシー・ペレス、マッキンゼー・アンド・カンパニー、シニアパートナー、マッキンゼー・ヘルス・インスティチュート、グローバルリーダー

「女性の健康がもたらす影響を測定すべき時が来ています」

ルーシー・ペレス、マッキンゼー・アンド・カンパニー、シニアパートナー、マッキンゼー・ヘルス・インスティチュート、グローバルリーダーImage: McKinsey

女性の健康分野への投資が不十分な理由は、経済的根拠が不確かなためではなく、経済的基盤として扱われてこなかったからです。測定されないものは優先されません。長きにわたり、性差の普遍性に関する仮定、データ不足、断片化した提供モデルが、投資を戦略的ではなく反応的なものにさせてきました。

この状況は今、変わりつつあります。「ウィメンズ・ヘルス・インパクト・トラッカー(WHIT)」イニシアチブは透明性とアカウンタビリティを推進しており、世界経済フォーラムとマッキンゼー・ヘルス・インスティテュートの青写真は、計測、研究、ケア、包含、投資を通じた強力なビジネスケースへの明確な道筋を示しています。

今、重要なことは、大規模な実施です。エビデンスを持続的な資本配分、政策改革、提供体制の変革へと転換し、永続的な経済的、社会的価値を生み出すことです。女性の健康を成長とよりレジリエンスの高い経済の基盤と捉えるならば、投資は選択ではなく必然となるでしょう。

クラウス・ルンゲ、バイエル、最高ヘルスエクイティ責任者

「女性の健康に対するよりホリスティックな概念が必要です」

クラウス・ルンゲ、バイエル、最高ヘルスエクイティ責任者

女性の現実のニーズに応えるイノベーションのパイプライン構築には、エコシステム全体の連携が求められます。データとエビデンスのギャップを、個人や単一の組織で解消することはできません。

産業界は政府、国際保健機関、患者コミュニティと連携し、優先課題を定義し、確固たるエビデンスを創出し、私たちが推進するイノベーションが女性の生涯にわたる健康の全領域を確実に反映するようにしなければなりません。

また、女性の健康をよりホリスティック(全体論的)に捉える概念が必要です。それは生殖に関わる領域だけでなく、特に閉経前と閉経期を含む生殖機能終了後の年代も包含するものです。

ウン・ブーンヒョン、テマセク財団、最高経営責任者

「フェムテックは女性の健康における構造的な格差を解消することができます」

ウン・ブーンヒョン、テマセク財団、最高経営責任者 Image: Temasek Foundation

女性の健康が軽視されると、家族と社会がその代償を払うことになります。ユニセフとの連携により、フェムテックソリューションを含むイノベーションを支援し、母体の健康を増進することにより、長きにわたって存在してきた構造的な格差の解消を目指します。慈善活動を触媒として活用することで、効果的な取り組みの検証、リスク軽減、拡大が可能となるでしょう。

ジャクリーン・カリア、MSDフォー・マザース、責任者

「従来の資金調達モデルを再考すべきです」

ジャクリーン・カリア、MSDフォー・マザース、責任者Image: MSD for Mothers

資源の限られた環境において、妊産婦医療への資金提供を促進するには、これがニッチな課題ではないという認識を広めることから始まります。妊産婦の合併症は、依然として女性の早期死亡原因トップ5のうち2つを占めており、妊娠出産時のケアは、生涯にわたる医療システムとの関わりへの強力な入り口となります。

妊産婦医療に投資することは、妊娠出産時の命を救うだけでなく、女性の生涯にわたる健康とウェルビーイング(幸福)の基盤を築くことでもあります。

この課題に対応するためには、従来の資金調達モデルを再考する必要があります。つまり、公的資金、民間資金、慈善資金を組み合わせた「ブレンデッド・ファイナンス」を導入し、すでに効果が実証されている施策を拡大していくことです。

今日、実証済みかつコストの低い介入策は存在しています。課題は、それらを一貫して公平に提供するための、調整された予測可能な資金を動員することです。

また、こうした投資が、女性の声を尊重する地域主導の解決策に根ざしていることも不可欠です。

地域社会における女性や少女の現実を理解する、地域コミュニティのリーダーたちや現場の医療従事者の手に資源を委ねることで、医療システムの強化、レジリエンスの構築、質の高い医療へのアクセス拡大が可能となり、いかなる女性や少女も取り残されることはなくなるでしょう。

集団的リーダーシップが前進の道となる理由

国際女性デーは、これまでの進展を認めつつ、依然として存在する構造的な格差に向き合う機会を提供します。女性の健康は特別な関心事ではなく、家族、労働力、経済を形成し、社会全体の健康状態を反映するものです。

女性の健康に関する研究と資金調達におけるバイアスを是正するには、以下のような協調的な行動が求められます。

  • 研究機関は、インセンティブ構造と代表性を検証する。

  • 産業界は、イノベーションのパイプラインを現実世界のニーズに整合させる。

  • 投資家は、長期的な価値を認識する基準を進化させる。

  • 慈善活動は、資金不足の分野を活性化する 。

  • 各国政府は、女性の健康を経済、政策戦略に組み込む。

  • 医療システムは、より優れたエビデンスと公平な提供を要求する 。

多様なリーダーシップの声を集めた本寄稿文で、核心的な真実を再確認することができるでしょう。すなわち、女性の健康における真の進歩は、孤立した取り組みからではなく、インセンティブの再構築、アカウンタビリティの向上、公平な投資の加速に意欲的なマルチステークホルダーのコミュニティから生まれるのです。

2026年の国際女性デーにおけるメッセージは、女性の健康に関する研究と資金提供におけるバイアスの是正が、道徳的課題であると同時に戦略的要請であるということなのです。

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